かるがも俳句会 平成30年5月17日(木)、石神井公園区民交流センター
- 夏帽子握りつぶして応援す
- 杉本 康子
- 薪能ひとは鬼にも仏にも
- 猪越 紀子
- 肘ゑくぼ見ゆる少女の更衣
- 千味 幸太郎
- 酒断ちの今日は許せと初鰹
- 宮田 敏子
- 「しあはせ」は妣の口ぐせ新茶の香
- 森永 順子
- 里山の間近に見ゆる茶摘かな
- 熊谷 良子
- 江戸前の穴子と言ひて戴きぬ
- 高橋 武司
- 夏川に笹舟追つて子等かける
- 長束 瑠美子
- 行く春や水脈ひく舟の隅田川
- 渡部 良子
- 居眠りの列車の親子夏帽子
- 野々村 桂
- 樟若葉庭師の腰の花鋏
- 馬場 美智子
- 桜から柏へ移る餅文化
- 伊賀 篤志
- 西郷どん一足先に花見かな
- 鳥居 とく
- 歌舞伎座の壁に句のあり傘雨の忌
- 沖田 顫童
- 根を広げ高尾山道著莪の花
- 鈴木 芳江
- 枝下ろし悪魔のごとき薔薇の棘
- 堀江 康子
- 農鳥に鍬持ち替へる男かな
- 今村 たかし
薪能は人工の光の下では表現しにくい異次元の世界です。寺社の境内が黄昏の光に包まれ、やがて夜の帳が降りると、かがり火が私達を夢幻の空間に誘います。闇に包まれているからこそ集中して役者の舞姿や能面の繊細な変化も感じ取れます。善良な人が激しい愛執や怒りに人格を乗っ取られて鬼になり幽霊になり、やがて妄執を脱して成仏する。成仏する前に鬼はよく旅の僧に自分の不条理を語りますが、やはり鬼も誰かに自分の気持ちを聴いて欲しいのでしょう。(紀子)